耳の病気
両滲出性中耳炎
鼓膜の内側(中耳腔)に液体(滲出液)が溜まり、耳閉感や難聴などの症状が現れる病気です。小児に多い病気ですが、大人も発症します。痛みがほとんどないため、小児では難聴が顕著になるまで気づかれにくいことがあります。また乳幼児の場合には急性中耳炎がおこりやすくなることもあります。
原因としては 耳と鼻の奥をつなぐ耳管という管の働きの低下や、鼻の奥(上咽頭)にあるアデノイド(咽頭扁桃)と呼ばれるリンパ性組織の肥大、鼻炎や副鼻腔炎等の鼻の炎症があります。
治療は、局所治療、
- 経過観察:軽症の場合は、経過観察を行うこともあります。
- 薬物療法:鼻炎やアレルギー性鼻炎などの原因疾患に対する治療薬や、抗生剤、ステロイド薬などを投与します。
- 鼓膜切開術:鼓膜に小さな切開を行い、滲出液を排出します。鼓膜チューブと呼ばれる小さな管を挿入し、中耳の換気を改善することもあります
まずは、原因となっていることが多い鼻症状の改善をめざします。一般的には3か月をめどに、内服や耳管を通じて空気を通すなどの治療を行います。そうした治療によっても滲出液がなかなか抜けない場合は、鼓膜切開を行います。何度も鼓膜切開をすることになる場合は、患者さんの負担を考え、小さなチューブを鼓膜に留置することもあります。筆者は多くて3回までは鼓膜切開で対応しますが、それでもすぐに再度貯留をきたすのであれば、鼓膜チューブを留置した方がよいと考えています。当院では、乳幼児であってもご家族さまの了解を得ましたら、しっかりと局所麻酔をして痛みを感じなくした上で行うようにしています。鼓膜チューブを留置した状態を※図5に示しました。
滲出液を伴うだけでなく、鼓膜が鼓室の壁に癒着するようになってくることがあります。これは、鼻閉が続いた状態で、お子さんは鼻がかめないことが多く、結果として鼻啜りをすることになり、鼓室内が陰圧になるためと考えられます。この状態の鼓膜を※図6に示しました。この状態になると、病気の状態としては滲出性中耳炎よりさらに進行した段階である真珠腫性中耳炎へ向かう一歩となることがあるので、早期に鼓膜チューブを留置することがあります。鼓膜チューブの挿入により、耳管を通らない換気が可能になり、鼓膜の内外の圧力は等しく保たれ、滲出性中耳炎が軽快します。
お子さんが滲出性中耳炎と診断されたときに、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置を極端に嫌がる親御さんがおられます。これは、お子さんが大変に痛い思いすることや、鼓膜に穿孔を残す危険性を考えてのことと思います。痛みは、麻酔をしっかりすることでほとんどなくすことができます。ただ、耳元で大きな音がすることが怖いのは事実なので、理解してもらえる場合はしっかり話をする必要があります。どうしても怖い場合には、全身麻酔でチューブを入れることもあります。
鼓膜チューブ留置や鼓膜切開で鼓膜穿孔を残す可能性はゼロではありませんが、鼓膜チューブ留置をしても多くの場合、自然に穿孔は閉鎖し(チューブは脱落し)、むしろ、チューブが残っていてほしいのに、再度切開を必要とする場合が多いです。一方で鼓膜チューブ留置を行わないと、多量の貯留液のために、中等度難聴になり言葉の習得に弊害が出たり、癒着性中耳炎から真珠腫性中耳炎になるなど、もっと厄介なことになる可能性もあるのです。そうしたことから、当院では、必要に応じて鼓膜チューブ留置を行い、中耳炎が改善し抜去することになったら、穿孔が残らないように工夫をすると同時に、万が一穿孔が残っても比較的簡単に穿孔閉鎖を
両滲出性中耳炎の治療法
治療法は、病状や年齢、体質などを考慮して決定されます。
主な治療法は以下の通りです。
- 経過観察:軽症の場合は、経過観察を行うこともあります。
- 薬物療法:鼻炎やアレルギー性鼻炎などの原因疾患に対する治療薬や、抗生剤、ステロイド薬などを投与します。
- 鼓膜切開術:鼓膜に小さな切開を行い、滲出液を排出します。鼓膜チューブと呼ばれる小さな管を挿入し、中耳の換気を改善することもあります。
- 耳が聞こえにくい(難聴)
- 耳が詰まった感じ(耳閉感)
- 耳鳴り
- 声をかけられても反応しない
- テレビの音量を大きくする
- 前の方でテレビを見る
- 集中力が低下する
- 言葉の発達が遅い
乳幼児の場合、上記のような症状に加えて、以下のような症状が現れることもあります
- 鼻水
- 咳
- いびき
- 夜泣き
これらの症状は、他の病気によっても起こるので、耳鼻咽喉科を受診して正確な診断を受けることが大切です。
両滲出性中耳炎の原因
耳管機能障害が主な原因と考えられています。
耳管は、中耳と鼻咽腔を繋ぐ管で、中耳の気圧を調整する役割をしています。 耳管機能障害が起こると、中耳の気圧が低くなり、滲出液が溜まりやすくなります。
耳管機能障害の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- アレルギー性鼻炎
- アデノイド肥大
- 扁桃肥大
- 風邪
- 鼻炎
- 副鼻腔炎
その他にも、以下のような要因が滲出性中耳炎の発症リスクを高めると考えられています。
- 早産・低出生体重児
- 人工授乳
- 集団保育に通っている
- 喫煙
両滲出性中耳炎の種類
滲出液の量や粘稠度によって、以下の3種類に分類されます。
- 漿液性滲出性中耳炎:最も軽症で、滲出液が透明で粘稠度が低い。
- 粘液性滲出性中耳炎:漿液性滲出性中耳炎よりも粘稠度が高く、黄色っぽい色をしている。
- 粘膜性滲出性中耳炎:最も重症で、滲出液が粘稠度が高く、白黄色っぽい色をしている。
病状によって、経過観察や薬物療法、鼓膜切開術などの治療法を選択します。
両滲出性中耳炎の治療法
治療法は、病状や年齢、体質などを考慮して決定されます。
主な治療法は以下の通りです。
- 経過観察:軽症の場合は、経過観察を行うこともあります。
- 薬物療法:鼻炎やアレルギー性鼻炎などの原因疾患に対する治療薬や、抗生剤、ステロイド薬などを投与します。
- 鼓膜切開術:鼓膜に小さな切開を行い、滲出液を排出します。鼓膜チューブと呼ばれる小さな管を挿入し、中耳の換気を改善することもあります。
鼓膜の奥の中耳腔に滲出液が溜まる病気です。耳と鼻の奥をつなぐ耳管の働きの低下や、中耳粘膜の炎症が長引くと、粘膜からの滲出液が中耳腔に溜まるようになると考えられています。耳管は、鼻の奥に開口しますので、開口部をふさぐような障害物が原因となることも多いです。子供では、上咽頭にあるアデノイド(咽頭扁桃)と呼ばれるリンパ性組織が肥大しがちで、滲出性中耳炎を起こしやすい状態となっています。また、アレルギー性鼻炎により鼻の粘膜が肥大していたり、慢性副鼻腔炎で常に鼻漏がある状態でも起こりやすくなります。大人では、耳の閉塞感、聴力低下などでの自覚症状で来院されますが、子供では、聞き返しが多く、テレビを前の方でみている、などから気が付かれることもあります。
診断は耳鼻咽喉科で鼓膜の状態をみて、さらに専門的な検査の結果を行います。※図4にお示しするように鼓膜を通じて暗褐色や黄色い液体をみることができます。聴力検査や鼓膜の動きの検査によって、病気の程度がわかることもあります。
治療は、まずは、原因となっていることが多い鼻症状の改善をめざします。一般的には3か月をめどに、内服や耳管を通じて空気を通すなどの治療を行います。そうした治療によっても滲出液がなかなか抜けない場合は、鼓膜切開を行います。何度も鼓膜切開をすることになる場合は、患者さんの負担を考え、小さなチューブを鼓膜に留置することもあります。筆者は多くて3回までは鼓膜切開で対応しますが、それでもすぐに再度貯留をきたすのであれば、鼓膜チューブを留置した方がよいと考えています。当院では、乳幼児であってもご家族さまの了解を得ましたら、しっかりと局所麻酔をして痛みを感じなくした上で行うようにしています。鼓膜チューブを留置した状態を※図5に示しました。
滲出液を伴うだけでなく、鼓膜が鼓室の壁に癒着するようになってくることがあります。これは、鼻閉が続いた状態で、お子さんは鼻がかめないことが多く、結果として鼻啜りをすることになり、鼓室内が陰圧になるためと考えられます。この状態の鼓膜を※図6に示しました。この状態になると、病気の状態としては滲出性中耳炎よりさらに進行した段階である真珠腫性中耳炎へ向かう一歩となることがあるので、早期に鼓膜チューブを留置することがあります。鼓膜チューブの挿入により、耳管を通らない換気が可能になり、鼓膜の内外の圧力は等しく保たれ、滲出性中耳炎が軽快します。
お子さんが滲出性中耳炎と診断されたときに、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置を極端に嫌がる親御さんがおられます。これは、お子さんが大変に痛い思いすることや、鼓膜に穿孔を残す危険性を考えてのことと思います。痛みは、麻酔をしっかりすることでほとんどなくすことができます。ただ、耳元で大きな音がすることが怖いのは事実なので、理解してもらえる場合はしっかり話をする必要があります。どうしても怖い場合には、全身麻酔でチューブを入れることもあります。
鼓膜チューブ留置や鼓膜切開で鼓膜穿孔を残す可能性はゼロではありませんが、鼓膜チューブ留置をしても多くの場合、自然に穿孔は閉鎖し(チューブは脱落し)、むしろ、チューブが残っていてほしいのに、再度切開を必要とする場合が多いです。一方で鼓膜チューブ留置を行わないと、多量の貯留液のために、中等度難聴になり言葉の習得に弊害が出たり、癒着性中耳炎から真珠腫性中耳炎になるなど、もっと厄介なことになる可能性もあるのです。そうしたことから、当院では、必要に応じて鼓膜チューブ留置を行い、中耳炎が改善し抜去することになったら、穿孔が残らないように工夫をすると同時に、万が一穿孔が残っても比較的簡単に穿孔閉鎖を
いずれの治療法を選択する場合も、定期的に耳鼻咽喉科を受診し、経過観察を行うことが大切です。
その他
両滲出性中耳炎は、日常生活に支障をきたす可能性がある病気です。 早期発見・早期治療が大切ですので、少しでも気になる症状があれば、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
以下に、両滲出性中耳炎に関する参考情報をいくつか紹介します。
- https://www.magojibi.jp/course/exudative-otitis-media/
- https://www.kamio.org/otorhinology-disease/secretory-otitis-media/
- https://terao-jibika.com/shinsyutusei/
**このページが、両滲出性中耳炎について理解を深める一助となれば幸いです。
耳鳴りや難聴、耳に異物感や痛みを感じたり、耳の聞こえが悪い(難聴)といった症状があります。その症状によって発熱などを起こすこともあります。
おもな症状
耳が痛い、耳がかゆい、耳鳴りがする、聞こえにくい、耳だれがする、耳から出血がある、黒い耳垢がでる、など。
耳の主な病気
中耳炎
中耳炎とは、耳管経由で中耳が細菌に感染しておこる中耳の炎症です。
多くは急性中耳炎といわれる痛みが伴うものです。
耳管の長さが短い子供は中耳炎にかかりやすいと言われていますが、鼻やのどの風邪の細菌による原因などで、大人がかかることもあります。
耳鳴り
耳鳴りとは、実際に音がしていないにもかかわらず、何か聞こえるように感じる現象です。
症状が重い場合は、不快感や、不眠、ときにうつ状態などの症状を引き起こすこともあります。
頻度は少ないものの、耳鳴りが初期症状となり、腫瘍や血管病変の原因となることもあるので注意が必要です。
難聴
一般的に聴力が低下した状態のことを言います。
難聴と言ってもその種類や症状は、多種多様です。最近よく知られるようになったのが突発性難聴です。突発性難聴は予兆が無く、突然聞こえに障害が発生する病気です。殆どの突発性難聴は片側の耳だけに発生し、めまいや耳鳴りを伴います。適切な早期治療や安静が必要になりますので、上記のような症状が出た場合は、早めに当院にご相談ください。